料理にワインに競馬に文学。F氏のフランス滞在期


by hiramette

カテゴリ:競馬( 44 )

 さて、前回の引き続き。

 第4レースはG3カブール賞。二歳の1200メートル直線です。去年はシルバーフロストちゃん(今年の仏2000ギニー優勝馬)が勝ったレースですが、今年はわずか5頭立て。スミヨン騎手の騎乗の2歳女の子ソルシエール(Sorcière、日本語の意味は「魔女」)ちゃんが一番人気になりました。

 
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 が、勝ったのは2番人気、ギュイオン騎手騎乗のザンジバリちゃん。ギュイオン騎手はこの日3勝で、リーディング3位のスミヨン騎手にかなり近づいてきました。まだ20歳なのにもう199勝。200勝まであと1勝です。ルメさんのボルトシティーちゃんは4着に敗れてしまいました。

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 そしてこの日のメイン、ロートシルト賞です。この賞はおととしまで「アスタルテ賞」という名前でした。牝馬限定のマイルで、3歳と古馬の初直接対決です。ディフェンディング・チャンピオンのゴールディコヴァちゃんが圧倒的1番人気。今日はPas seule ちゃんではなく3歳のOnly Greenちゃんがペースメーカーとして登場です。

 こちらはゴールディコヴァちゃん。久しぶりの再開です。やはり4歳になって体がしっかりしてきた感じがします。

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 オンリーグリーンちゃんはブリンカー着用です。

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 こちら、パスキエ騎手騎乗のプロヴィゾちゃん。
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 レース3日前にして追加登録したレディーマリアンちゃん。去年のオペラ賞馬です。その後ゴドルフィンに買われて、今日はデットーリ騎手が乗ることに。

 
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 スミヨン騎手はサプレーザちゃんで勝負です。

 
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 そして、ルメさんは今年のフランス1000ギニー、プール・エッセイ・デ・プーリッシュを制したエリュージブ・ウェーブちゃんで勝負。少し荒れ気味でした。

 
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 ゴールディコヴァちゃんに乗って、パドックから馬場に向かうオリビエに「がんばって!」と声をかけました。すると、日本語で「大丈夫」と返してくれました。オリビエは慎重な人なので、余計なことは滅多に口にしないけれど、その「大丈夫」を聞いて少し安心しました。それにしても、僕なんて見てるだけでこれほど緊張しているのに、これから大レースに向かうオリビエは本当に落ち着いています。これから自分がすること、これから自分におこる近い未来に対して、「大丈夫」って他人に言えるってすごいことだと思います。さすがは超一流騎手です。

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 ついにレースが始まりました。まずは予想通り、オンリーグリーンちゃんがペースメーカーになって、先頭に立ちます。ゴールディコヴァちゃんはその真後ろ、向かい風を避けるように2番手に陣取ります。先頭を行くオンリーグリーンちゃん騎乗のボニヤ騎手が時折、背後のオリビエの方を見てこのペースでいいか確認を取ります。エリュージブ・ウェーブちゃんはその後ろ。最後がプロヴィゾちゃん。

 ゴール400メートルをきると、オリビエのゴーサインが出ました。少しずつ手綱を動かすと、ほぼ馬なりで悠々先頭へ。

 Allez Olive!「行け、オリビエ!」僕は拳を握り締めて叫びました。

 オリビエが追い始めると、ゴールディコヴァは突き抜けるような速さで飛びました。後ろは必死に追っているけれど、まったく追いつきません。ゴール前50メートルをきると逆にオリビエは追うのをやめました。

 下の写真はレース中、ゴール20メートルぐらい手前。携帯でとったのに、自分でもびっくりするぐらいドンピシャのタイミングの写真です!

 
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圧巻の完全勝利!2着エリュージブ・ウェーブちゃんとの差は1馬身半と出ましたが、オリビエは最後持ったままだったので、実際は3馬身はついている勝利。誰も何も文句の言えない、女王の走り。感動しました。

帰ってくるルメさんは、しかし納得がいった表情。3歳最強を改めて示したのだから、この負けは仕方がないという感じでした。

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ゴールディコヴァちゃんが帰ってきました。
「おめでとう!」と叫ぶとにっこり笑ってくれました。

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こうして、ゴールディコヴァちゃんの2連覇が見事達成されたのでした。オリビエはこの日の最終レースも大外から差しきる見事な勝利。2勝して大満足だったのではないでしょうか。

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翌日の記事を見ると、「女王ゴールディコヴァが歴史に名を刻む」という一面記事に、タイムが出ていました。1分35秒7。やや重の馬場だったのに、歴代二位の記録。しかも同一牝馬の3,4歳連続勝利は初めてだそうです。G15勝。これで、特に異常がない限りは間違いなく16日のグランプリ、ジャック・ル・マロワ賞に向かうでしょう。僕も必ず来ます。

こうして、歴史的な午後に、ドーヴィルに居られたという特別な幸せをかみ締めながら、僕は競馬場をあとにしたのでした。

おめでとうゴールディコヴァちゃん。
おめでとうオリビエ。

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by hiramette | 2009-08-04 23:47 | 競馬
市役所前から、F氏が向かったのは今回の目的地、ドーヴィル競馬場でした。8月2日は今年初のドーヴィルでのG1、ロートシルト賞(旧アスタルテ賞)がある日。牝馬限定1600メートルの争いです。

昨年は僕が応援するゴールディコヴァちゃんが見事優勝。初G1を飾ったのでした。彼女はその後、数多くのG1を制覇。今年に入ってもイギリスでG1を制し、ディフェンディング・チャンピオンとして古馬牝馬、3歳牝馬と戦います。この賞を何ヶ月も待った僕は、競馬場に足早に向かいました。

競馬場に向かうまでの道にはたくさんの一軒家があります。かわいらしいものもあれば、誰も住んでいなさそうな閑散たるものまで。家の外観がおもしろいのはドーヴィルならではです。

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競馬場の敷地に入ってから、入り口は結構歩きます。並木道をどんどん歩いていきます。

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こちらが入り口です。たまたま無料の入場券を持ったおじさんに出会い、一緒にタダで入れていただきました。ラッキーです。

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競馬場内の写真を何枚か。まずこちらはジョッキールーム、検量室などがある建物、表彰もここでします。

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次にメインの建物。馬券を買う窓口や、カフェ、展望レストランなどがあります。

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ターフはこんな感じ。平坦な小回りコースです。

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その他、馬の絵や銅像などを売るギャラリーもあります。たまたま、来店中の今年平地でナンバーワンの、ジャン・クロード・ルジェ調教師に会いました。

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なんと競馬場内にエルメスのショップもあります。すごい競馬場です。

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さて、第1レース前にジョッキールームの前に着くと早速オリビエがインタビューを受けていました。今日のゴールディコヴァについての質問なのでしょう。

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いよいよレース開始です。パドックの様子をご覧ください。

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第一レースは、ダートです。といっても、日本のダートのように硬い土ではなく、非常に柔らかい馬場です。第二レースは一日一度の5連単、カンテです。18頭立てのハンディキャップ。当てるのは至難の業です。そして、第三レースは古馬の1600メートル。実は、競馬場に着いたときに入り口でくじを配っていて、何のことかわからずに引いてみたら、6という数字が書かれていて「第3レースでこの番号の馬が勝てばプレゼントあげます」と書いてありました。僕が引いた6番のWin for sureちゃんといういかにも勝ちそうな名前の子は、たまたま1番人気で、しかもレースも快勝。GUYON騎手お見事。僕はTシャツをもらいました。ははん。

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次回③はいよいよゴールディコヴァちゃん登場です!

ほほう、競馬場もなかなかおもろそうやないか、かわいい馬にクックリしといたろ、という感じのクックリお願いします!
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by hiramette | 2009-08-04 06:43 | 競馬
 みなさん、こんにちは!今日も元気なF氏です。

 今日は久しぶりに夏っぽい、暑い一日でした。うっすら雲がかかっていましたが、陽気な気持ちいい昼下がりでした。
 
F氏は昨日の予告通り、午後からメゾン・ラフィット競馬場に行ってきました。パリの中心からRERという郊外へ向かう鉄道に乗っていきます。例えばシャトレからだとポワシー、あるいはセルジ方面行きのRER・A線に乗って25分ぐらいです。値段は片道3・7ユーロ。東京から府中競馬場へ行くよりは近いです。

さて、今日はメゾンラフィット大賞、ユジェーヌ・アダン賞と2歳の ロベールパパン賞があるからか、いつもより多くの観客が。

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パドックもたくさんの人がいます。メゾンラフィットは、こじんまりした感じがとってもいいと思います。騎手も馬もとても近くに見えます。

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さて、今日のオリビエは重賞を含む5鞍に騎乗です。昨日はアスコット競馬場でアスクちゃんに乗り、すばらしい3着でした。今日は勝利を見せてくれるのでしょうか?

すると、早速第3レースPrix de la pépinière(牝馬4歳以上オープン2100メートル)ですばらしい競馬を見せてくれました。スタートと共に先頭に立つと、そのままうまく折り合って、最後の直線へ。そこから追って逃げ切りゴール。これは本人も大変嬉しそうでした。

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帰ってくるところを「おめでとう!」と言うと、にっこり笑顔を返してくれました。

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そして、第4レース。2歳のG21100メートル直線のロベール・パパン賞(Prix Robert Papin)です。この賞はとっても大切な賞。過去の勝者にナタゴラちゃんがいます。彼女は、後にイギリス1000ギニーを制し、鞍上武豊騎手で、ドーヴィルのG1ジャック・ル・マロワ賞を二着になったすごい子です。

オリビエは7月5日のG3ボワ賞を制した、2歳の女の子Dolled up(ドルド・アップ)ちゃんとのコンビで勝負です。2歳というと人間で言うところの中学生ぐらいでしょうか。ちなみにこの英語の名前は「着飾る」や「おしゃれにする」などの意味があります。日本語の馬名にしたら「オメカシ」ちゃんといったところでしょうか。

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しかも、笑えることに、この子本当にオメカシちゃんなんです。鼻梁のところに注目してください。なんか白い部分がハートマークに見えませんか?かわい過ぎです。この子は真っ直ぐ走れなくて、いつも少し左向いて走ります。そういうところも茶目っ気たっぷりです。

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断然の1番人気はスミヨン騎手騎乗のシユニ(牡)ちゃんでしたが、結局勝ったのはパスキエ騎手騎乗の、スペシャル・デューティー(牝)ちゃんでした。2着がシユニちゃん、そして3着がオリビエのドルド・アップちゃんでした。

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2歳のレースでもオスのほうがメスよりも1.5キロ重く背負わされるんですが、僕思うに、2歳だと女の子が勝つことのほうが多いような気がします。昔馬に詳しい先輩が仰っていましたが、馬も人間と同じで小さいときは女の子の方が、男の子よりも成長が早いようです。ほら、小学校の頃なんて、女の子の方が男の子よりも大きいじゃないですか。僕なんて小さかったから、しょっちゅう女の子に口でも力でも負けていました。ははん。あ、それは今でもかわらないかもしれません。えへ。ということで、2歳のときは男の子と女の子の斤量をいっしょにしてもいいのではないかと思います。

結果 Prix Robert Papin (G2)
1. Spécial Duty  S・パスキエ
2. Siyouni C・スミヨン (1 ½馬身) 
3. Dolled Up O・ペリエ (アタマ)

さて、本日のメインはG2ユジェーヌ・アダン賞。3歳の2000メートル直線です。レースの模様を激写しようと、埒(らち)の近くに行きました。こんな直線をはしります。

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どうです!こんなに近いんですよ!時速約60キロの馬たちが駆け抜ける瞬間は、まさに迫力満点です。

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勝ったのは伏兵、イギリスから来たドビュッシーちゃん。名手ジミー・フォーチュン騎手騎乗でした。この子はイギリスのエプソムダービー8着の子で、前走もG210着とぱっとしませんでしたが、ここに来てはじけました。

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2番人気に推されたオリビエのアリバーちゃんは見せ場なく6着。次に期待しましょう。

結果 Prix Eugène Adam (G2)
1. Debussy J・フォーチュン
2. World Heritage S・パスキエ (1/2馬身)
3. Prince Siegfried CP・ルメール (2馬身)

こちら、レースを終えて帰ってくるドビュッシーちゃん。どうもお疲れ様でした。すばらしいレースを見せてくれてありがとう。

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最後のレースで、僕がパリで一番好きな公園の名前を持つ、ビュットショモン(Buttes Chaumont)ちゃんに乗るオリビエを写真に撮ろうとすると、こちらを向いて微笑んでくれました。結果は3着。素晴らしい騎乗でした。

フランス競馬はこういうふうに騎手さんと人間的な付き合いができるところがいいですね。挨拶したり、少し話したり。日本の競馬は、話す=情報を漏らすというイメージがあるのか、ぴりぴりし過ぎているように思います。そこが少し残念ですね。

ちなみに僕が好きな公園のほうのビュット・ショモンはパリ19区にあります。地下鉄7bis線に同名の駅があります。気持ちいいですよ。時間があればいってみてください。

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最後に、昨日のキングジョージに関する記事を読んだのですが、1着のコンデュイちゃんは基本的にブリーダーズカップを目的に調整されますが、調子次第では凱旋門賞にも来るかもしれないそうです。3着のアスクちゃんは、より馬場が柔らかいほうが能力を発揮できるそうで、ロンシャンが向いているそうです。ほぼ凱旋門賞に来ると見て間違いなさそうです。去年6着からどれだけ成績を伸ばせるのか見ものです。

 
そういや、日本にもハートマークの子がいましたが、ドルドアップちゃんはハートがいびつなところがいいんです。いやいや、ハートやないやろと仰るかもしれませんが、僕はハートだと思ってます。思わせてください。そんないびつな愛のカタチをもつ、かわいいドルドアップちゃんにどうか応援の1クックリお願いします。

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最後のおまけに、こないだF氏が作ったちらし寿司です。作り方は今度お教えいたします!
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by hiramette | 2009-07-27 05:54 | 競馬

夏の凱旋門賞

 今日はキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスの日でした。いわずと知れたイギリス版の凱旋門賞です。とはいいつつも今年最強の3歳馬、シーザスターズちゃんの棄権などもあり、多少小粒感は否めませんでした。

 まずは上位の結果から。

 1Conduit R・ムーア
 2Tartan Bearer M・キネーン  1 1/2
 3Ask O・ペリエ  アタマ

 この3頭はいずれも凱旋門賞に登録しているようです。とはいえ、今日一着のCONDUITちゃんは、前走のエクリプス・ステークスでシーザスターズちゃんに5馬身以上も離されてしまっています。一見、巻き返しはちょっと厳しそう。でもちゃんと分析してみないとわからないのも事実。

 今日のパリチュルフ紙を読んでいると、今年のフランス・ダービー、オークスを取ったジャンクロード・ルジェ調教師のコメントが載っていました。

 「レース前の調教師の情報なんて役に立たない。レース後の情報のほうがずっと役に立つ」

 以前のエクリプス・ステークスで大敗してから、CONDUIT陣営はどう立て直し、また今日勝ってどのような感触を掴んだのか。それが大切だということなのでしょう。明日の新聞をじっくり読んでみたいと思います。

 ちなみに2着の子は、前回アスコットG1でヴィジョンデタちゃんの2着。安定した強さです。

 明日はメゾン・ラフィットでG2ユジェーヌ・アダン賞。またまた、メゾンラフィットに出張してきます。

 へへん。

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by hiramette | 2009-07-26 08:03 | 競馬

ワタシヲシンジテ。


日本の馬の名前には、とてもかっこいいものがたくさんあります。ダンスインザダークとかディープインパクトとか、実に素晴らしい命名です。最近ではブレークランアウトというのがとってもいいと思いました。これは、ビリヤードの用語で、一度に全ての玉を落としてしまうことらしいです。

馬の名前は大事だと思います。それによって、僕たちは特定のイメージを持つようになり、好きになったり、下手したら悪いイメージを抱いたりするかもしれないからです。ということで、今日はフランスの馬の名前をいろいろご紹介しようと思います。

フランス競馬の馬主さんは、フランス人である必要はなく、様々な国籍をもった方がいます。だから、馬の名前も様々な言語や文化を反映しています。もちろん、お父さん馬やお母さん馬から名前をもらったというパターンが多いのも事実ですが、今回はいろんな言葉に注目して、馬の名前を紹介していきましょう。

一番多いのはやっぱりフランス語の名前のお馬さんでしょうか。去年のフランス・ダービー馬の名前はVision d’état 「国家のヴィジョン」。大物っぽいです。去年の凱旋門賞は5着でしたが、今年に入って既にフランスとイギリスのG1を1つずつとっている名馬。オリビエ・ペリエとのコンビで今年は勝負することになりそうです。

あと、僕の友人、ガロリーニ師の調教馬ではN’oublie jamais「決して忘れないで」と言う子もいます。 その妹はNid d’amour「愛の巣」 ちゃん。馬主のマダム・ヴィルデンシュタインさんは、必ずNから始まる名前をつけるのです。ほかには Œil de maître「巨匠の目」ちゃんというのもいます。この馬はガロリーニ師の奥さん、アレクサンドリーヌのものですが、昔、全然走らなかったこの子を師が買ってきて、見事障害のG1馬に育て上げたのでした。G1勝利後の翌日の新聞の一面の見出しは「巨匠ガロリーニは正確に見た」。最高の思い出の一つです。あと、地名を使ったものも多いですね。 例えば今年のダービー馬Le Havreちゃんは「ル・アーブル」というノルマンディーの都市の名前です。馬主さんがノルマンディー出身のようです。

フランス語の名前の次に多いのがやはり英語でしょうか。今日のブログの題名はBilieve meというマルコム・パリッシュさんの馬から頂きました。この子は馬体も小さいのに毎朝の調教のとき一生懸命走るがんばり屋さんです。えらい!そんな彼女の名前が「私を信じて」だと、そらもう 応援せざるを得ないでしょう。 3歳のときオリビエが乗ってG1サンタラリー賞2着でしたが、それ以降なかなか勝ち星がありません。それでも応援しちゃうんですよね。かわいいから。そういえば、昔日本にも「ビリーヴ」ちゃんというスプリンターズステークスを勝った女の子がいましたね。確か、中山が改装中で新潟で勝ったのではなかったでしょうか。そのときも僕は彼女を応援していました。うーん、やっぱり「信じる」っていい言葉ですね。

パリッシュさんの馬で、他にFor joy「楽しむために」という子もいます。デビューするとき乗り役のオリビエが「とってもいい馬」と教えてくれた子です。確かにすばらしい素質をお持ちなんですが、ちょっとお馬鹿ちゃん。「あたしが一番前はしらなあかんねもん」と騎手が制するのもお構いなしに、いつもレース開始と同時に先頭へ。最後の直線に向いたときは、「へへん、あたし一番やったもんね、フンフフンフフーン」という感じでバテはじめます。そして、十分にレースを「楽しん」だ後、最終的にビリで帰ってきます。どないやねん。

他には、シャネルのオーナーヴェルテメールさん の馬でNo dreamちゃんという子もいました。フランスダービーを狙っていたこの子を応援していた僕は、この子の名前を「夢じゃない」と訳していましたが、ダービーが終わって負けてから「夢がない」だったんだと気付きました。おそ。あとひどいのでは Divorce me「離婚してね」という名前の子もいます。 どういう精神状態でこの名前にしたんでしょうか。ひど。他に、Goobye my friend「さよなら僕のともだち」なんて、哀愁を誘います。友達が亡くなったりしたのでしょうかね。名前からいろんな想像をしてしまいます。ちなみに今年のフランス1000ギニー、2000ギニーを勝ったお馬さんも英語の名前。 1000ギニーはElusive Wave「捕まえにくい波」ちゃん。馬主さんはサーファー? 2000ギニーは僕の大好きなSilver frost「銀色の霜」ちゃんでした。

他にはイタリア語なんてのも。例えば僕が好きなSpirito del vento「風の魂」ちゃん。カッコいい名前です。しかもこの子本当にその名前にぴったりの走り方をします。最後方待機で、最後の直線で一気に加速。全部ごぼう抜きして2007年のG2、ダニエル・ヴィルデンシュタイン賞を獲りました。まさに風です。かっこいい!ちなみに今年凱旋門賞を狙っている Buena vistaちゃんはスペイン語ですね。すばらしい景色、つまり「絶景」という意味です。

さてさて、それでは日本語の名前の馬はいないのかいいますと、それがいるんです。例えば基本的なところでスシちゃん。なんかかわいそうです。実際弱いです。日本の馬に「ハンバーガー」ちゃんと名付けるぐらいひどいですね。あとタツヤちゃんという子もいます。誰の名前なんでしょうか?もっとすごいのはサガミハラ「相模原」。神奈川県の地名です。まあ。ル・アーブルちゃんもいるから相模原もあってええんかしらん。ちなみにフランスで初の日本人調教師となった小林さんの管理馬は、ソヨカゼちゃん。かわいいですね。

どうでもいいけど、馬同様、パリにはひどい日本語のレストランがあります。しかも間違いだらけ。「スシハウス」にしたいのに「スンハウス」、「かまど」にしたいのに「かまビ」。ひらがなの「ど」が「ビ」になってます。文字の形状が似ているからこのようなミスを犯したんでしょうが、日本人にしてみれば超アクロバティックな命名です。釜から火?なんか、おこげが多そうです。あともっとひどいのは「レストラン東京―大阪」。範囲広すぎ。味にこだわりがなさそうです。最後に成田。はい、もう飛んでください。もちろん全部オーナーは日本人ではありません。

以前、Nanetteちゃんと話していたときに、おもしろい馬の名前考えてみようよ、ということになり盛り上がったことがありました。彼女が提供してくれたのは「ソトワク」ちゃん。内枠にはいったら実況の人は大変です。あと、僕が思いついたので「ダイヨンコーナー」。もっと大変です。「ダイヨンコーナーが一着でゴールイン」って、ラジオを聞いている人にしてみりゃ、いったい馬はどこにおんねん、という話。

みなさんも、おもしろい馬の名前を考えてみてはいかが?そして、おもろいネタが出来たらぜひとも教えてください。

みけけ。

いつも読んでいただきありがとうございます。あつかましくも、ブログランキングなるものに参加しておるのです。どうか、私も変な名前の日本料理店に入って、失敗しました、の1クックリお願いします!日本料理店の選択を何度も間違えたF氏も大変励みになるのでございます。

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by hiramette | 2009-07-26 06:50 | 競馬

ストーリーのある競馬

 いろいろ書きたいことがありすぎて、ついつい先週の土曜日に行ったメゾンラフィットの観戦レポを先送りにしてしまっていました。すみません。

 ところで昨日の夜にアップしたウォッカの話。多くの方々に興味を持っていただいたようで、1日で200人超の方が来てくださいました。本当に出るといいですね。後は発表を待つばかりです。いずれにしても、今年の凱旋門賞は目が離せません。このブログで、またこちらの様子を知っていただけたら幸いです。馬券の買い方など基本的な情報も載せていますので、入り口のページの右の欄「競馬」の項目からご覧ください。

 それ以外の料理やワイン、生活に関する記事も書きますので、お楽しみに。

 さてさて、7月18日、雨が降ったからか、少し肌寒い日でした。
 F氏はパリの西側に住んでいますので、西の郊外のメゾンラフィットは比較的行きやすいです。RER のA 線で凱旋門のあるエトワールから20分ぐらいです。

 駅の様子はこんな感じです。

 
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 駅前にはきれいな市役所があり、僕は結構好きです。

 
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競馬場までは少し遠いので、バスを使う方も多いです。歩くと30分ぐらいです。
 さて、競馬場のコースはこんな感じ。

 
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 最長2000メートルの直線があり、確か世界最長だったと思います。
 当日の芝はこんな感じです。

 
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パドックは和やかで、ロンシャンと比べると人が少なく、田舎の競馬場っぽいです。またそれも違ったよさがあります。

 
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 このように、騎手もとっても近くに。
 こちら、スミヨン騎手。ザルカヴァでお馴染みアガ・カーンさんの専属騎手です。
 
 
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 こちらはパスキエ騎手。

 
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メゾンラフィットの直線です。

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 第3レースが終わって戻ってきたところ。

 
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 この日のメインレースはG3 メシドール賞。1600メートルの直線です。一番人気に推されたスミヨン騎乗のアルナダナちゃんが、3馬身離して勝ちました。このG3 は強豪ぞろいではないので、次はドーヴィルあたりのG2かG3に行くのだと思います。

 さて、この日のオリビエは騎乗が3つしかありませんでしたが、3着、1着、2着とどれも本当に素晴らしい騎乗でした。特に第5レース単勝29倍のロサーナちゃんに乗ったオリビエは、最初行きたがっているのを押さえ、折り合いがついてからは最内の節約コースを取り、直線になって内からするっと伸びて、見事ハナ差の一着。勝った馬、調教師もさることながら、このオリビエの騎乗は賞賛するに値します。オリビエがいるとレースが実に面白い。他の騎手も明らかに彼を意識しているのがわかります。帰ってきたところを「おめでとう!」というと微笑み返して、日本語で「ギリギリね、ハナ差」といってくれました。

 
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 この日、たまたま競馬場にいらっしゃったSさんとお話しました。彼が仰っていましたが、オリビエの競馬はまさに「スタートからゴールまでが1つのストーリーになってい」ます。いやしかし、かっこいいこといいますね。今後使わせていただきます(笑)。本当の素晴らしい騎乗とは競馬を超えた普遍的な何かを見せてくれるものなのだと思います。だから、人は感動するし、競馬を人生の比喩にしたり、あるいは競馬から生きることを学ぶことができるのでしょう。

 今週はフランス中部のヴィシーで開催。土曜日にイギリスでキングジョージがあって、日曜日にまたメゾンラフィットでグランプリG2のユジェーヌ・アダン賞です。

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by hiramette | 2009-07-23 01:28 | 競馬

フランスのG1やG2のレースでは、本命馬のレース展開が有利になるように、同じ厩舎からペースメーカーの馬を出すことがあります。役割は、あくまで本命の馬が、スムーズなレース運びができるように手助けすることです。馬券も、このペースメーカーと本命馬はセットで扱われ、厩舎を意味するécurieの頭文字を取ったEマークでオッズ画面に表示されます。単勝の馬券を買った場合、このEマークのついたどの馬が勝っても当たりです。この方式はフランス特有だと思います。

僕がフランスで出会った馬の中で、最も感動を与えてくれた馬のうちの一頭がゴールディコヴァです。彼女は、今フランスで現役の牝馬で、マイラー(1600メートルを走る馬)の中ではナンバーワンです。今日は彼女と、彼女のお友達のおはなし。

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ゴールディコヴァは2007年の秋に、シャンティーの新馬戦でデビューして勝ち、昇級戦のBレースでも勝って、2歳時のレースを終えました。翌年4月、ロンシャン競馬開幕と共に再びBレースに出ると、鞭を使わずに2着。当日僕は生でレースを見ましたが、重目の馬場だったし、年明け第一戦だったので、無理をしなかったようでした。この後、5月11日に行われた、プール・エッセイ・デ・プリッシュ(フランス1000ギニー)に向かいました。

ところが去年は、運悪く怪物ザルカヴァの年だったのです。先行して好位から直線で粘るものの、次元の違う瞬発力で突風のごとく追い込んでくるザルカヴァには敵いませんでした。仏1000ギニーを2着、仏オークス(ディアーヌ賞)は3着。いずれも勝ったのはザルカヴァでした。僕は、ゴールディコヴァの適正距離、それに走り方や小さ目の体格が、日本で大好きだったラインクラフトに似ているように思えて、好きになりました。もちろん、鞍上がオリビエだということもあります。

ディアーヌ賞は前のほうでほんとによく粘っていました。と同時に2100メートルは彼女には長すぎる印象を受けました。実際、フレディ・エッド調教師も2100を限界と見たようで、彼女をマイル路線に戻しました。

2008年7月6日、ゴールディコヴァは1600メートル直線、3歳牝馬限定のG3クロエ賞に出走するために、メゾンラフイットのパドックにいました。でも一頭で勝負に出たわけではありませんでした。彼女には仲間がいたのです。名前はパ・スール(pas seule)ちゃん。日本語にすると「一人じゃない」。調教師はゴールディコヴァちゃんと同じヘッドさん。馬主さんも同じでヴェルテメールさんです。この子は地方の競馬場で小さい賞に一回勝っただけで、その後伸び悩んでいました。

僕は並んで周回している2頭をみて、何か微笑ましくて笑ってしまいました。中学生の女の子が引っ込み思案なので、友達と一緒に模擬試験を受けにきたような映像を思い浮かべていました。パ・スールちゃんの鞍上は日本でも知られているダビー・ボニヤ騎手。オリビエとボニヤ騎手は、馬がターフに出ると並んでゆっくりスタート地点へと向かいました。

このレースを見ていたときは、緊張しました。力があるのに未だ、重賞未勝利のゴールディコヴァにどうしても勝ってもらいたかったからです。ところが、レースは意外にあっけなく終わりました。ペースメーカーであるパ・スールがスタートから飛ばして先頭につくと、ゴールディコヴァはその背後に陣取り、風をよけるようにして2、3番手で進んでいきます。残り400メートルを切ったとき、オリビエがゴーサインを出すと、ゴールディコヴァはぐんぐん伸び、2着トップ・トスに3馬身差をつけて快勝しました。トップトスちゃんはG3を制した馬です。ゴールディコヴァの真価が証明された日でした。空は真っ青で、黄金色の光が大地に、そして2頭の牝馬に降り注いでいました。暑い夏が始まろうとしていました。

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8月3日日曜日、ドーヴィル競馬場で行われる、牝馬限定直線1600メートルのG1 ロートシルト賞(旧アスタルテ賞)の出馬表に、ゴールディコヴァの名前がありました。僕はクロエ賞の後すぐに、鉄道の切符を買って日帰り往復するちょっと忙しい小旅行を計画して、パリから2時間かけて競馬場に来ていました。このレースは3歳牝馬と古馬との初直接対決です。前回を上回る強敵が2頭いました。そのうち一頭はスミヨン騎乗の4歳ダルジナ。前年のフランス1000ギニーを制した名牝です。もう一頭はルメール騎乗の芦毛の3歳ナタゴラ。牝馬にもかかわらず、仏ダービーに出して3着になりました。

この日はパ・スールちゃんはお休み。代わりにスプリング・タッチちゃんという子がペースメーカー役を勤めました。ゴールディコヴァは少し雨が降り柔らかくなった芝生の上を、爽快に駆け抜けダルジナに2分の1馬身差でゴール。ついに待望のG1を手にし、自らの強さを証明しました。当日のオリビエは絶好調。一人で行ったドーヴィルでしたが、大満足で帰りました。

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こうなれば、もはやG1戦線を突き進むほかに道は残されていませんでした。こうしてゴールディコヴァは9月7日のロンシャンのマイル、ムーランドロンシャン賞を目指して調整されました。

当日は日仏150周年記念賞という特別賞が会った日で、日仏両国の競馬交流賞を受賞するにふさわしいルメール騎手が見事勝利しました。日本から駆けつけたGさんと共に横断幕を出して勝利を祝したのは、本当にいい思い出になりました。でも、僕は日本で最初に知られるようになったフランス人ジョッキー、オリビエになんとしてもこの日勝ってもらいたいと思っていました。

この日のゴールディコヴァにはたくさんの仲間がいました。鞍上のオリビエ、ペースメーカーとして出るパ・スール、ずっと応援してきた僕や日本人の方々、それに競馬を愛するフランス人の人に推されて、1番人気になっていたのです。みんなが彼女の走りに賭けていました。信じる力が頂点に達した最後の直線、ヘンリー・ザ・ナビゲータをものともせず、迫りくるダルジナの猛攻を振り切って、ゴールディコヴァはフランスの、いやヨーロッパのマイルチャンピオンに君臨したのでした。勝ったオリビエを大声で祝福すると、「大丈夫ネ」と微笑みました。翌日の新聞を読むと、「この子はペースメーカーがいるほうがすっとよく走ってくれる」とオリビエがコメントしていたのが印象的でした。

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10月25日のブリーダーズカップ・マイルの夜、中華街のPMUカフェのテレビ画面の中を1着で駆け抜けた美しい馬は、もう小さい牝馬のゴールディコヴァではありませんでした。僕は安心すると言うより、驚嘆し、歓喜し興奮して、日本語で何かよくわからない言葉を叫んでいました。

今年に入り、4歳になったゴールディコヴァ。復帰戦のイスパーン賞はまだ万全でなかったのか7着に敗れましたが、先日7月8日のイギリス、ニューマーケットで行われた牝馬限定のファルマスステークスでは1着。強い、僕らの大好きなゴールディコヴァが戻ってきました。実はこのレースの前日、ゴールディコヴァのお父さんである種牡馬アナバが突然死にました。勝利の翌日「父アナバにオマージュを捧げたゴールディコヴァ」と新聞は書きたてました。きっとゴールディコヴァは父に会ったこともないだろうし、顔も覚えてないだろうに、お父さんのために勝ったといわれると、なんだか不思議な感じがしました。人はこうして父仔の物語を作り、感動したりするものだけど、本当は幼少のころ母の元を離れると馬はたった一頭で、厳しい競馬の世界で勝ち抜いていかねばならないのです。

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2週間後の8月2日はロートシルト賞。ゴールディコヴァはディフェンディング・チャンピオンです。登録リストを見るとエリュージブウェーブなど、3歳牝馬のエリートが顔を並べています。でも、その中にゴールディコヴァのともだちもいました。
Pas seuleです。

二人のチームワークは、きっと今年も多くの人々を感動させてくれるに違いありません。僕も微力ながら、この2頭を応援し続けたいと思っています。

穢れのない力で

どこまでも駆けろ

ゴールディコヴァ

きっと君は一人じゃない


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by hiramette | 2009-07-22 21:39 | 競馬
 2009年7月21日の夜。さきほど、何の気なしに、いつも買う競馬新聞パリ・チュルフに目をやっていたら、とんでもない記事を発見。

「ウォッカ凱旋門賞追加登録を検討」

 何ーーーーーーーーーーっ!!!!

 マジで驚きました。秋は国内に専念して、引退されるんやないんですか?びっくりした!

 急いで、日本のネットやJRAのホームページを確認。しかしそんな記事は一切なし。何かの間違い?と一瞬思ったけど、パリチュルフ紙はフランス競馬の新聞で最もプロが多く読む素晴らしい競馬の専門紙。かなりまじめな内容なので、よっぽどのことでない限りミスはない。

とはいえ、あくまで検討しているという表現なので、現実に来てくれるかどうかについては慎重にならざるを得ません。何せ、ウォッカちゃんは今年凱旋門賞に登録していない。5月6日の登録では5000ユーロ(65万円)で済むところが、10月1日の追加登録では10万ユーロ(1350万円)。プラス輸送費もかかります。勝つ気がなければまず来ないでしょう。でも日本競馬史でもトップクラスの名牝ウォッカちゃんなら、という期待が膨らむのも事実です。

 いや、しかし、それにしてもすげーーっ!もし、来るのが本当だとしたら、今年の凱旋門賞はとんでもなく楽しいことになりそうです。

 とにかく、日本の方々はまだ誰も知らないと思いますので、いち早くフランスからの情報を流します。

 あまりにわくわくしてきたので、かなり時期尚早ですが、出走馬をここで大胆予想。まあ、もちろん馬の状態如何で十分変更可能ですが、有力馬は今のところこんな感じでしょう。

古馬(牡) 

 ヴィジョンデタ(オリビエ・ペリエ)→ガネー賞1着ほか
 
 ユームザイン(クリストフ・スミヨン?)→サンクルー大賞3着、去年の凱旋門賞2着
 
 スパニッシュムーン(ライアン・ムーア)→サンクルー大賞1着

 シーマ・ド・トリアンフ(?)→イタリアンダービー1着、キングジョージ出走

 アスク(?)→キングジョージ出走

古馬(牝)
 アルパイン・ローズ(ジェラール・ド・モッセ)→サンクルー大賞2着

 ウォッカ(武豊)→JC3着

 ダレミ(ジミー・フォーチュン)→プリティーポリーステークス(G1)1着、去年ヴェルメイユ賞ザルカヴァの2着

3歳牡馬

 シーザスターズ(ミカエル・キネーン)→2000ギニー1着、英ダービー1着、エクリプスステークス(G1)1着

 フェイム・アンド・グローリー(ジョニー・ムルタ)→英ダービー2着、愛ダービー1着

 カバルリーマン(マクシム・ギュイオン)→パリ大賞1着

3歳牝馬
 スタセリタ(クリストフ・ルメール)→サンタラリー賞1着、仏オークス1着

 サリスカ(ジミー・スペンサー)→英、愛オークス1着

 ブエナビスタ(安藤勝己)→優駿牝馬1着

その他 オブライアン厩舎からペースメーカーの子 

 と総勢15頭ぐらいになってしまいましたが、実際は多少減って12頭位に落ち着くという予想です。予想した騎手勢の中には、ランフランコ・デットーリ、ドミニック・ブフ、ステファヌ・パスキエ、イオリッツ・メンディザバル、チエリー・チュリエーズ、アンドレア・スボリッチ、ミルコ・デムーロなどの世界で通用する素晴らしい騎手が含まれておらず、これらの騎手がどの馬に乗るのかにも注目です。特にデットーリはトランコあたりのゴドルフィン勢で、ブフ騎手は仏ダービー2着のフュイッセあたりで攻めてくる可能性が十分にあり得ます。

 この中で人気を予想すると、

 ①シーザスターズ
 ②スタセリタ
 ③サリスカ
 ④フェイム・アンド・グローリー
 ⑤ヴィジョンデタ
 ⑥スパニッシュムーン

 といったところでしょうか。特記事項はまず①シーザスターズ。英2000ギニーとエプソムダービーを同時に制覇したのは20年ぶりぐらいだと思います。凱旋門賞に出るとはまだ明言していませんが、でたら最も怖い一頭です。ベテランのキネーン騎手はこの馬に出会ってまた騎手をがんばろうと思った、といっているほどです。次に②スタセリタ。この子は前から行く子でルメさんがちょっと追っただけで、4馬身ぶっちぎって仏オークスを勝ちました。未だ無敗です。底がわかりません。先頭を行ってそのまま突き放して勝つ戦法はルメさんの真骨頂でもあります。欠点がない馬です。次は③サリスカ。英オークスを勝って、愛オークスに行きましたが、なんと持ったままで3馬身差離して勝ってしまいました。スペンサー騎手が、最後の直線、横で必死に追っている2着馬の騎手に向かって、乗りながら「こんちは」といっていました。恐ろしい馬です。
 
 この他、古馬牝馬のアルパインローズとダレミちゃんを入れた理由を少し。
 
 まず、アルパインローズちゃんは、サンクルーの牝馬限定G2 を勝ったあと、サンクルー大賞で2着。前から行くしそんなに乗り難しそうな馬ではないので、1着は無理にしても3着以内はありえると思います。次にダレミちゃんですが、この子は去年9月第二週の牝馬限定G1ヴェルメイユ賞(2400m)で、ルメさん騎乗で大変好走してとてもいい印象を持っています。今年に入ってG1も取ったし、ロンシャンの同じコースなら好走しても驚けません。
 
 さて、25日は凱旋門賞2009を占う意味で、きわめて重要なレース、キングジョージがアスコットで行われますが、オリビエは上に挙げたアスクちゃんに騎乗するようです。ルメさんはシーマ・ド・トリアンフ。吉田さんの馬です。今年の超有力場、シーザスターズちゃんと、ユームザインちゃんは棄権が決まりました。この他8月末のドーヴィル大賞、9月第2週のニエル賞、フォア賞の結果が大事であることは言うまでもありません。

 それにしても、今年は素晴らしい。非常にレベルの高い戦いが期待できそうです。

 ちなみに言っておくと、ロンシャンの2400メートルはよく知らないとやられるコースです。最初、向こう正面を通りながら、800メートルほどほぼ直線に走ります。その後坂を上りますが、そこでできるだけ力を使わないようにしなければなりません。次に坂を下りますが、ここも折り合いが重要で、飛ばしたらあとで脚が使えなくなります。次に、「偽りの直線」に入ります。ここで仕掛けるとまだ早い。直線でバテます。その後の直線は約500メートルあるので、十分に追い込める距離です。要は、できるだけ力を使わないで我慢して我慢して、最後の直線勝負に持ち込めるかが鍵です。日本のような人工的に作られた高速馬場に慣れた馬は、ロンシャンの自然のアップ・ダウンを走っているうちに、ものすごい体力を消耗させられる可能性があり、注意が必要です。とにかくコースをよく知っている騎手ほど有利でしょう。そうでなくてもコースをよく研究しなければなりません。

 また、フランス競馬は、みんなダンゴでスタートします。それだけに、騎手の駆け引き、そして何よりも馬と折り合っているかどうかが、最も重要でもあります。個人的な見解としては、ウオッカは3から5番手あたり、ブエナビスタは去年のザルカヴァのように最後の瞬発力に賭けて、後方2、3番手待機が妥当でしょう。日本のオークスは生で見ましたが、あの強烈な末足があれば面白いことになるかもしれません。

 もちろん、騎手の戦略で作戦変更も可能です。3番手がいいとか一番後ろがいいとかは状況が変われば無意味な発言なので。でも、とにかく道中はエネルギー消費を極力抑えないと勝てないコースです。これは、ドミニック・ブフ騎手もパリチュルフ紙の特集号で言っていることです。

 現在、日本では前哨戦の話が取りざたされているようです。ブエナビスタちゃんは札幌記念のようですね。時期を考えるといいと思いますが、でも終わったらできるだけ早くフランスに来て、こちらの芝に慣れる必要があると思います。芝の質の違いは、人間でも踏めばよくわかります。個人的には、やはり前哨戦を使うのが賢明かと思います。僕の知っているフランス人の競馬関係者もみなそう言っています。芝に慣れさせないで、「結局強いもの勝つ」なんて、それではあまりにも馬が可哀想でしょう。人間でもフランスに来たらすぐに肌がカサカサになったり、のどが荒れたりするのに・・・・

 ウォッカちゃんが来てくれるのなら、ヴェルメイユを使ってステップアップしてほしいですね。結果如何では、凱旋門賞同日の牝馬限定G1オペラ賞(2000m)もありますが、まあ今年引退ならばやはり凱旋門でしょうか。いずれにしても怪我をすることなく元気に走ってもらいたいものです。


 さらにパリチュルフ紙は、ユタカさんの夏の予定も載せてくれました。14日にイ
スタンブールのジョッキー・シリーズに騎乗された後、15日にフランス入りで10日ほどいらっしゃるようです。主な目的は22日ドーヴィル競馬場で行われるジョッキーシリーズ、エルメスカップに騎乗するためだと思われますが、そのほかフランスで初の日本人調教師となった小林さんの馬にも騎乗されるんじゃないかと思います。

 以上、記事から見た情報を僕の予想と共にお送りいたしました。最後に、念のため、正確な情報は主催者、関係の方々の発表でご確認くださいますようお願い致します。

 それにしてもめちゃくちゃ楽しみです!!!

 ははん。

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by hiramette | 2009-07-22 05:11 | 競馬

重賞など大きなレースになると、馬を連れてパドックを周回する厩務員さんは、スーツを着てネクタイを締めることが多くなります。勝った馬には記念撮影があるので、それを期待していい格好をするらしいのです。見ているパドックの観客のあいだでは、おい、あいついい服着てるから、あそこの厩舎は自信があるんちゃうか、などと様々な憶測が飛び交います。中には勝負服と同じ色のネクタイをしてコーディネートする馬主さんや、調教師さん、それに厩務員さんもいるほどです。

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僕が競馬場に行くときは、凱旋門賞とか、ディアーヌやジョッケクラブでもない限りスーツは着ません。けれど、青いスニーカーを履いていくことなら何回もありました。それは決まって僕の大好きな馬、インディゴ・ブルーを応援しに行く日でした。今日はそんな僕と彼、それに青いスニーカーのおはなし。

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僕がインディゴ・ブルーに会ったのは、2007年の10月。メゾンラフィットの調教コースでした。その日は本当に肌寒く、調教は朝6時ごろから始まるので、ホッカイロを持ってないと体の先から冷えてきます。当時僕は肉体的にも精神的にもかなり疲れていました。ジャンポールの調教を見に来たのも、馬を見たいというよりは、パリにいるのが嫌で、逃げ出したくてメゾンラフィットに来たのでした。

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調教用の、障害コースの外側の平地を走っている馬群の先頭を、栗毛で艶のある大きい馬が走っていました。調教師のジャン・ポールに聞きました。

「あの馬の名前は?」

「インディゴ・ブルー。まだ2歳の馬だよ。こないだパリッシュさんが持ったきたんだ」

3歳の馬と比べても大きいぐらいだったので、驚きました。腰から尻にかけて、たくましく盛り上がっていて、すばらしい馬体でした。

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実はインディゴ・ブルーは最初イギリスで調教されていて、向こうの2歳の新馬戦に出る予定だったのですが、ゲート付近で暴れて逃げたそうです。イギリス人馬主のパリッシュさんは、将来的に障害の馬に育てようと思って、ジャンポールのいるフランスにこの牡馬をつれてきました。とはいってもこの子のお父さんはNight shiftという馬で、スプリンター系。馬体も整ってきているし、レースに出られそうだからとりあえず緒戦は平地の1600メートルで行こうということになりました。

2007年11月1日、肌寒いサンクルーの新馬戦で彼はデビューしました。出走10頭中人気薄の単勝15倍。フランスの競馬はよく馬主や調教師、それに騎手を基準にして買われるので、障害ではトップの調教師のジャンポールが平地で出しても、人気にならないことが多いのです。騎手も若手の、シルヴァン・ルイ騎手。おそらくはみんな障害に向けての調教代わりのレースとしか思ってなかったのかもしれませんでした。

ところがインディゴは、2,3番手から最後の直線で先頭に立ち、後ろから追ってくる一頭に並ばれかけてもしつこく突き放し、叩き合いの末ハナ差で勝ったのでした。しかも2着は名調教師アンドレ・ファーブル師の管理馬で、後にG2を制するデモクラットです。皆が唖然とする中、僕は陰鬱な気持ちを吹き飛ばして、飛び上がって喜んだのを覚えています。

こうして僕は、インディゴの大ファンになりました。彼が僕を元気づけてくれたような気がしたからです。彼に会うためにしばしばジャンポール宅を訪れました。インディゴは、いつもおとなしく、のそっとしていて、レースのときのような力強さはありません。学校のない日に寝てばかりいる、体の大きな子供のようでした。

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緒戦を勝利で飾ったことをきっかけに、ジャンポールはインディゴを平地のエリート路線に送り込むことにし、11月末の2歳のリステッドレース(オープン特別クラス)に登録しました。そのときから僕はゲンを担いで、インディゴ・ブルーがレースに出るときは、何か青い色のものを身につけていこうと決めました。いろいろ探した挙句、インディゴ(藍色)ではないけど、青いスニーカーがいいと思い、それを履いて行くことにしました。

ところが、11月24日、インディゴはレース中に蹄鉄がとれて、血を流して帰ってきました。結果は4着でした。でも、馬のせいではなかったんだから、僕はじっくり翌年を待つことにしました。

2008年3月、インディゴ・ブルーはBレース(日本で言う500~1000万条件)からスタートし、首差の2着。上々の滑り出しでした。ジャンポールはまた、オープン特別のOMNIUM II賞に登録しました。この賞は、後にロンシャンのG3フォンテーヌブロー賞に通じるオープンで、その先にはG1プール・エッセイ・デ・プーラン(フランス2000ギニー)も待っています。僕は自分がインディゴの馬主であるような錯覚を覚え、夢の舞台であるG1で走っているインディゴ・ブルーの姿を毎日想像しました。

ところが現実はそう甘くはありませんでした。結果は5着。同世代のエリートを相手になすすべなく、鞍上のティエリー・チュリエーズ騎手は唇を噛みました。彼はジャンポールのところで見習い騎手をしていたので、直接の弟子です。でも、ジャンポールは特に彼を責めるでもなく、黙って宙を見上げました。競馬場に来るときにはスプリンターのような足取りだったスニーカーを履いた僕の足取りは、帰りになるとレース後の疲れきった馬のように重くだるい足取りになりました。こうして僕のスニーカーは、少しずつ磨り減っていきました。

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それでも、僕はインディゴブルーを応援し続けました。恩返ししたいような気持ちで彼が出走する競馬場に毎回足を運びました。

2008年4月14日。月曜日。G1戦線から離れたインディゴ・ブルーが、地元メゾンラフィット競馬場のターフにいました。僕はその日カルチエ・ラタンの高等師範学校であった学会のあと、急いでRERに乗りメゾンラフィットへ向かいました。駅に着くとバスがなく、仕方なしに走りましたが、大雨が降ってきて、僕はびしょ濡れになりました。第3レースに何とか間に合って、パドックに行くと、ジャンポールが僕に気付いて、嬉しそうに微笑みました。

「おお、来てくれたのか」

「はい、インディゴ・ブルーの応援に」

1400メートルの直線。鞍上はチュリエーズ騎手。僕らは競馬場内のテレビの前に陣取りました。フランスの競馬場では、週末の重賞のときだけ屋外にスクリーンを設置するので、普通の日は双眼鏡でレースを見るか、テレビ中継を見るかしかありません。

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« Allez, c’est parti la troisième course, prix Djebel, 1400m à parcourir… »

競馬実況中継の低く、冷静な声が競馬場に響き渡ります。ジャンポールはテレビにかじりついて独り言を言います。

「よし、いいスタートだ、うん、そう、そこ、いいぞ、そのまま」

その言葉と共に、彼の体が揺れます。ジャンポールは元障害のジョッキー。自分がインディゴ・ブルーに乗っているかのように、一完歩ごとに、体全体でリズムを取ります。どどっ、どどっ、どどっ、どどっ。残り500メートルを切ったとき、ジャンポールが真っ赤な顔をして、叫びました。

« Va-t’en ! Va-t’en ! »
「出ろ。今だ、出ていけ!」

馬の背の上にいるような前傾姿勢で、全身でリズムをどどっ、どどっと取りながら右腕を大きく振り下ろします。

« Tu vas gagner, tu vas gagner ! »
「お前が勝つんだ、勝つんだ!」

複数の馬体は重なり合わさるかのように、ゴール板を駆け抜けました。クビ、アタマ差の3着。ジャンポールは悔しさを隠し切れずに、歯を噛み締め両手の拳を強く握り締めました。

その次の日から僕はひどい熱を出して、3日ほど寝込みました。ひどい雨に打たれたからなのかもしれません。

その後、インディゴ・ブルーはフランス2000ギニーの5月11日、レースに出ました。もちろんG1ではなく、第1レースのDレース(500万条件のようなもの)です。好走しましたが、ゴール前で後ろの牝馬に差され、2着に敗れました。そして、その後腰を痛めてしばらくレースに出られなくなりました。

それから、僕の青いスニーカーには穴が開きました。もちろんインディゴ・ブルーを応援する日だけ履いていたわけではなかったので、パリの石畳の道に傷つけられてしまっていました。雨が降ってきて、靴の中が冷たいので、靴の裏を見ると横に擦り切れた跡が見えました。僕はこのスニーカーを履くのを止めました。

6月のセリに出されたり、秋に虚勢手術をしたり、様々な紆余曲折がありました。そして久しぶりに冬に会いに行ったとき、艶もなくなり、元気のなさそうな顔をしたインディゴ・ブルーに僕は再開しました。せん馬になったと言うことは、子供を作れないと言うこと。つまり、種馬になれない以上残りの命は走るしかないのです。雨に濡れた岩のような瑞々しかった尻が、植物の育たない乾燥地帯の乾いたもろい岩のようになっていました。少し痩せた彼の体を見て、僕はことばを失いました。

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ジャンポールは年末年始に南仏のカーニュ・シュール・メールで行われる障害レースに向けてインディゴを調教していました。ところが結果は落馬、落馬、四着。今年の春にもう一度、平地に戻されました。

肌寒い3月のサンクルーのパドックで、インディゴブルーの背中に跨っていたのはオリビエでした。彼は僕の方を見るとにこやかに挨拶しました。その馬は僕にとって特別な馬なんだ。勝ってくれ、オリビエ。頭の中で用意していた言葉が詰まって、何も言えませんでした。ありがたいことに、彼はすばらしい競馬で2着になりましたが、その後は成績が振るわず、売りに出され、馬主が代わり、また障害に戻されました。

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今年の6月16日、インディゴ・ブルーは障害専門のオトゥイユ競馬場にいました。3600メートルハードル。僕は国立図書館から抜け出して、携帯でグリーンチャンネル、エキディアを見ていました。10以上のハードルをスプリンターの子が越えられるのだろうか。負けてもいいから、とにかく致命的な怪我だけはしないで欲しい。お願いだから、無事に走ってくれ、インディゴ。一つ一つの障害を越えるたびに、僕はそう祈りました。

すると、第4コーナーを曲がったインディゴ・ブルーは、先頭に立つと、あのサンクルーの新馬戦のときの時のようなしぶとい足で、他馬に並びかけられても、決して前に行かせようとしません。騎手の鞭が怖いのか、単に他の馬に前に行かれるのが嫌なのか、それともレースで勝たなければならないと思っていたのかはわかりません。けれどもインディゴは初戦と同じような競馬で、オトゥイユのゴール板を1着で駆け抜けたのでした。首差でした。

今年の秋から、また彼の障害馬としての生活がスタートします。僕は、彼が行く場所ならどこでもいくと思います。インディゴブルーのスニーカーは、もう破れてしまったけど、まだ捨てないでとってあります。

がんばれ、インディゴブルー。そして、どうか無事に走り続けてください。

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by hiramette | 2009-07-20 07:30 | 競馬

パドックの人びと④

④夢のかけらを入れる袋

パドックの外側ににいる人びとが観客だけかと言えば、そうではありません。例えば、観客がレースを見に行っている最中や、レース終了後にゴミを集めて回る清掃係の人たちがいます。サンクルー競馬場は、馬券売り場とパドックが隣接しているので、付近にはたくさんのハズレ馬券が散乱しています。それを拾い集めるのが、掃除をする人たちの仕事の一つです。

今日は、その中の一人でアフリカから来た黒人の青年のおはなし。彼と僕とが出会ったのも、サンクルー競馬場のレース後の、塵が散乱したパドックでした。

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彼がどの国から来たのか僕は正確には知りません。アラブ系の顔立ちではなく、いわゆる黒人さんなので、アフリカ中部あたりから来たのでしょう。名前も一度聞いた気がしますが、あまりに聞きなれない名前なので忘れてしまいました。フランス語に強い訛りがあるのと、流暢にはしゃべらないことから、おそらくはフランス語圏出身ではないか、フランス語教育をそんなに受けられる環境になかったかのどちらかだと思います。

日本もそうですが、フランスの競馬場には外れ馬券がひどく散らかっています。びりびりに引き裂かれてあったり、馬番を隠すように何重にも折ってあったり。馬券の種類もいろいろで、単勝、複勝、馬連、ワイド、それに、総ながし、ボックス、三連単に五連単もあります。額は、下は2ユーロから上は数百ユーロまで。

そこには様々な人の欲望やエゴ、ゴール前で消えた夢が、ちぎれて残骸となって散らばっています。全てをあわせるととんでもない額になる紙切れを、単に「ハズレ」と一言で片付けるのは、恐ろしい気がします。

 実際、一度Fがロンシャン競馬場で2000ユーロのはずれ馬券を拾い、僕に見せてくれたことがありました。その紙を、レース中に握り締めて興奮していた人のことを考えるとぞっとしたものです。昔、パレロワイヤル近辺のルーブル骨董品街で見た、赤色のカラフルな紙幣を思い出しました。第二次大戦中に日本軍が侵略した東南アジアで作り、戦後すぐにただの紙切れになったものでした。

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様々な数を消費し、それを一部の人にしか還元しないレースというシステム。人間に意見の相違があり、自分と他者を区別し、自分が優位に立ちたいという根源的な考えが、この場所を成り立たせています。ただ、ここは偶然が支配する場所。貧乏でも勝つし、金持ちでも負ければ敗者です。そのような立場の逆転を可能にするからこそ、ここで人は危険な快感を覚えるのかもしれません。

青い清掃服に身を包んだそうじの兄ちゃんは、ハズレ馬券をひたすら拾い続けます。塵も積もればなんとやら、というけれど、彼は本当に文字通り塵を集めることで給料をもらっているのです。彼が外れた馬券を入れるビニール袋は、想像上の動物バクの如く、レースが終わるごとに人の悪夢を黙々と食い続けます。他人が捨てた欲望をひたすら拾いながら、兄ちゃんは何を考えているのでしょう。自分の夢のことかもしれません。

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彼はいつもここで働いているわけではありません。毎日同じ場所で競馬が開催されるわけではないからです。彼と何度か話して仲良くなった頃、他の日はどうしてるの?と尋ねてみました。すると、サンクルーとメゾンラフィットで競馬をしている日だけ通って働いている、と言いました。それ以外のパリ近辺の競馬場は、彼が働く清掃業者の管轄外らしいのです。競馬場で仕事のない日は、別の清掃会社で働いていて、オフィスの掃除をやっているのだと教えてくれました。彼のアパートは、物価の安いパリの東の端ヴァンセンヌの森の近く。サンクルーもメゾンラフィットもパリの西の郊外で、仕事あるごとにパリを横断します。

僕の顔を見つけるたびに、彼は満面の笑みで握手を求めます。そして、今日はでかいの当たった?と聞くのが口癖。最初は、いや馬券は買わないんだ、と言っていましたが、あんまり同じことを聞くから面倒くさくなって、そのうちオリビエの勝ちっぷりにあわせて、今日はいいよとか、まあまあだねとか、全然駄目だね、などと言うようになりました。どんな結果を告げても、彼は、まあ頑張れよと笑いながら肩を叩きます。純朴で素直な白い歯です。

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一度だけ、私服の彼にサンクルー駅で会ったことがあります。その時彼は彼女と一緒で、競馬場へ向かうところでした。単に競馬をしてみたかったのか、自分が働いている場所を彼女に見せたかったのかはわかりません。

そのとき僕は、ガロリーニ厩舎のインディゴ・ブルーを応援するために、ものすごく急いでいて、タクシーを捜していました。そして、金持ちでもないのに、生まれて初めて、競馬場に行くのにタクシーに乗りました。その際、彼らを見つけた僕は一緒に乗るよう勧めました。そのときの彼は、本当にうれしそうでした。競馬場の前で降りるとき、貧乏学生に似合わないタクシーから降りる自分が、働いている彼から感謝されることに変な罪悪感を感じ、周りの人に見られるのも妙に気恥ずかしかったのを覚えています。

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僕は、そんな彼に恩返しをしてもらいました。忘れもしない去年の夏です。6月の月曜日、僕は草の匂いと太陽の光に誘われて、サンクルー競馬場に来ていました。前日ディアーヌ賞で大好きなゴールディコヴァちゃんが3着に終わったのが少し残念ではありましたが、それでも騎乗したオリビエはすばらしい競馬をしたので、満足していました。

するとレース前、馬に乗ってパドックを周回するオリビエ・ペリエ騎手から、急に声をかけられました。「プレゼントがある」と日本語で言うのです。「あとで」という言葉を頼りに、レース終了後ジョッキーの出口の前で待っていると、彼は当日レースで着用していたジョッキーパンツをくれたのでした。

僕は、思いがけないプレゼントに歓喜し、また興奮して言葉を失っていました。でも、落ち着いて考えると、手ぶらできていたので、それをしまうリュック・サックも袋も持っていないことに気づきました。せっかく泥や汚れのついたジョッキーのズボンをそのままの状態でとっておきたいのに…。

そんな時、そうじの兄ちゃんが通りかかりました。自分に起こったことを一息に話し、何か入れるものを持っていないかと尋ねました。すると、彼はいつもの笑顔でOKと言い、例の仕事用のハズレ馬券を入れるビニール袋を持ってきてくれました。こうして、少し大きすぎではあるけど、僕はそこに貰いたての宝物を入れて帰りました。余りに天気がよく爽快で、サンクルー競馬場からセーヌ川の辺まで行って川沿いに歩きました。暑かったのか、兄ちゃんのくれたビニール袋をしっかり握りすぎたからか、手が妙に汗ばんでいたのを覚えています。

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こうして、僕は今でも、この青い作業着を着て働く友達に会うのを楽しみにしています。調子が良い時も、まあまあの時も、全然駄目でも、夢のかけらを拾い集める彼の顔を見ると、一緒に笑えるような気がするからです。

明日は、メゾン・ラフィット競馬場に行ってきます。久しぶりに、パドックで彼に会えたらいいなと思っています。

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by hiramette | 2009-07-17 20:15 | 競馬